幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「……そういえば、昨日旧体育館で考えたんですけど、嵐役が狙われたってことは、犯人は嵐役に未練がある人なのかなって……それで、その」


報告しなきゃ、と口を開いたけど、千尋さんが犯人じゃないかと口にするのは気が引けた。


たとえそれが事実だとしても、人を悪者扱いするのは気分のいいものじゃない。


上手く言えないけど、千尋さんの名を出すのが躊躇われたのだ。


「千尋さんの出られなかった舞台が『青嵐』で、ポルターガイストを起こしているのは千尋さんの霊じゃないかって?」


尻すぼみになったあたしの言葉を美保さんが引き継ぎ、あたしはコクリと頷く。


美保さんは少し考えて、「可能性は高いでしょうねぇ」と言った。


「1番辻褄が合うもの。本当のことを確かめる術がない以上、憶測でも1番妥当なものを信じるしかないでしょう」


「確かに、人を疑うのは辛いけどな」


白川先輩の言葉は、あたしの心にストンと落ちた。


あたしたちは過去に戻る方法を知っているわけではなくて、ましてや全てを知る千里眼を持っているわけでもなくて、少しずつ情報の欠片を集めて、繋ぎ合わせていくしかない。


だから、本当のことが分からなくて辛い。


千尋さんがもうこの世の人でなくても、生徒会のみんなみたいに顔を突合せて、話が出来ればいいのに。


「別にまだ山名千尋だと決まったわけじゃない。どんな目的でなぜ今になって出てきたのか、何も情報がない。先入観は真実を歪めるから、深く考えるな」


藤原も珍しく励ましてくれて、あたしは気持ちを立て直すように大きく頷いた。


こういう時は、藤原も案外いいやつなんじゃないかって思うんだよね。


あたしの目が黒いうちは、口が裂けても言ってやらないけど。
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