幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「なんだ、黒カビか」
「へ?黒カビ?」
素っ頓狂な声を上げるあたしに、白川先輩はダンボールを下ろしながら「他に何があるんだ」と言った。
「血、とか……」
「部室に?まさか」
白川先輩は肩を竦めてみせる。
まぁ、確かに流血沙汰が起こるような部活とも思えないし。
あったとしてもちょっとぶつけたとか、それくらいだろう。
あぁ、普段なら気にならないことが、一気に気になり出してしまう。
色んなことが起こるから、神経が尖っちゃってるんだな、あたし。
ふぅ、と息を吐くと、美保さんが背中をトントンと叩いてくれた。
その時に体の向きを変えた美保さんは、ふと壁のある一点を見つめて言葉を漏らした。
「……これなんだろう」
その視線を辿ると、そこにはあたしが昨日ちらっと目にした卒部生たちの名前の落書きがあった。
そっか、あたしは昨日たまたま見つけたけど、みんなは知らなかったんだ。
「西暦らしい数字と名前が書いてあるから、卒部生伝統の落書きなのかなって、あたしは思ったんですけど……」
「あぁ、なるほど。私も中学の時更衣室に落書きしたなぁ」
「でも、部員全員ってわけでもなさそうだ」
美保さんの横から覗き込んだ白川先輩は言う。
あたしが小首を傾げると、白川先輩は指先でトントン、と数字を叩いた。
「部員全員なら西暦に対してもっと多い人数の名前が書いてあるはずだけど、2人しか名前がない」
確かに、これだけ部員数が多くて伝統のある部活なら、壁全体に落書きが及んでいても不思議ではない。
でも落書きがあるのはせいぜい人1人分の幅くらいだ。
「部長と副部長じゃない?」
「演劇部は部長1人副部長2人」
美保さんの問いに藤原が答える。
ということは、この名前は代表の名前じゃないってことだ。
じゃあ誰の名前?
ここの部室は、ずっと昔から演劇部が使っているのに。
「へ?黒カビ?」
素っ頓狂な声を上げるあたしに、白川先輩はダンボールを下ろしながら「他に何があるんだ」と言った。
「血、とか……」
「部室に?まさか」
白川先輩は肩を竦めてみせる。
まぁ、確かに流血沙汰が起こるような部活とも思えないし。
あったとしてもちょっとぶつけたとか、それくらいだろう。
あぁ、普段なら気にならないことが、一気に気になり出してしまう。
色んなことが起こるから、神経が尖っちゃってるんだな、あたし。
ふぅ、と息を吐くと、美保さんが背中をトントンと叩いてくれた。
その時に体の向きを変えた美保さんは、ふと壁のある一点を見つめて言葉を漏らした。
「……これなんだろう」
その視線を辿ると、そこにはあたしが昨日ちらっと目にした卒部生たちの名前の落書きがあった。
そっか、あたしは昨日たまたま見つけたけど、みんなは知らなかったんだ。
「西暦らしい数字と名前が書いてあるから、卒部生伝統の落書きなのかなって、あたしは思ったんですけど……」
「あぁ、なるほど。私も中学の時更衣室に落書きしたなぁ」
「でも、部員全員ってわけでもなさそうだ」
美保さんの横から覗き込んだ白川先輩は言う。
あたしが小首を傾げると、白川先輩は指先でトントン、と数字を叩いた。
「部員全員なら西暦に対してもっと多い人数の名前が書いてあるはずだけど、2人しか名前がない」
確かに、これだけ部員数が多くて伝統のある部活なら、壁全体に落書きが及んでいても不思議ではない。
でも落書きがあるのはせいぜい人1人分の幅くらいだ。
「部長と副部長じゃない?」
「演劇部は部長1人副部長2人」
美保さんの問いに藤原が答える。
ということは、この名前は代表の名前じゃないってことだ。
じゃあ誰の名前?
ここの部室は、ずっと昔から演劇部が使っているのに。