幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「……ごめんなさい、恥ずかしいところを見せて」
沈黙を破ったのは岩橋さんだった。
岩橋さんは申し訳なさそうに、曖昧に笑った。
「ひかり先輩、部活来てらっしゃらないんですか?」
「2ヶ月前くらいからね。気持ちは分からなくもないんだけど……」
「というのは?」
白川先輩の言葉に、岩橋さんは少しだけ目を伏せた。
「『青嵐』の嵐役は、元々ひかりがやる予定だったの」
ひかりさんは1年生の頃から圧倒的な演技力とその存在感から、すごく期待されていたらしい。
3年の最後の公演で、主演の嵐を演じるのはひかりさんだと。
本人もそれを信じて疑わなかったし、周りもそれを望んでいたのだから、部内では半ば当然のこととして認識されていたという。
でも────
「呼ばれなかったの、名前が」
嵐役に選ばれたのは、日菜子先輩だった。
「確かに日菜子は5月に転校してきたばかりだったけど、ひかりに劣らない演技力もあったし、なにより独特な嵐の雰囲気を既に持っていたから、私たち何も言えなかった。でもひかりは納得できなかったと思う」
「それって、演劇なんてこれっぽっちも知らないあたしが言うのも変ですけど、なんでひかりさんじゃ駄目だったんですか?日菜子先輩の方が嵐役に合ってても、ひかりさんにしちゃえばよかったのに」
「舞台を観る人にとっては舞台が全てで、舞台裏の事情なんて関係ないの。観客にこれ以上いい舞台があると思わせてしまう舞台なら、公演しない方がマシなんだ」
岩橋さんは寂しそうに笑う。
みんな、きっと理解してるんだ。
日菜子先輩が演じる嵐がベストだって。
でも理解してるのと割り切れるのとは違う。
だからひかりさんは部活に来なくなってしまったんだろう。
あれ、この話ってもしかして…………
沈黙を破ったのは岩橋さんだった。
岩橋さんは申し訳なさそうに、曖昧に笑った。
「ひかり先輩、部活来てらっしゃらないんですか?」
「2ヶ月前くらいからね。気持ちは分からなくもないんだけど……」
「というのは?」
白川先輩の言葉に、岩橋さんは少しだけ目を伏せた。
「『青嵐』の嵐役は、元々ひかりがやる予定だったの」
ひかりさんは1年生の頃から圧倒的な演技力とその存在感から、すごく期待されていたらしい。
3年の最後の公演で、主演の嵐を演じるのはひかりさんだと。
本人もそれを信じて疑わなかったし、周りもそれを望んでいたのだから、部内では半ば当然のこととして認識されていたという。
でも────
「呼ばれなかったの、名前が」
嵐役に選ばれたのは、日菜子先輩だった。
「確かに日菜子は5月に転校してきたばかりだったけど、ひかりに劣らない演技力もあったし、なにより独特な嵐の雰囲気を既に持っていたから、私たち何も言えなかった。でもひかりは納得できなかったと思う」
「それって、演劇なんてこれっぽっちも知らないあたしが言うのも変ですけど、なんでひかりさんじゃ駄目だったんですか?日菜子先輩の方が嵐役に合ってても、ひかりさんにしちゃえばよかったのに」
「舞台を観る人にとっては舞台が全てで、舞台裏の事情なんて関係ないの。観客にこれ以上いい舞台があると思わせてしまう舞台なら、公演しない方がマシなんだ」
岩橋さんは寂しそうに笑う。
みんな、きっと理解してるんだ。
日菜子先輩が演じる嵐がベストだって。
でも理解してるのと割り切れるのとは違う。
だからひかりさんは部活に来なくなってしまったんだろう。
あれ、この話ってもしかして…………