幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
嵐役を巡って孤立し、失意の果てに自ら命を絶った千尋さんと、選ばれるはずの嵐役に選ばれなかったひかりさん。


時代や生死こそ異なるものの、嵐役に懸ける思いや状況は酷く通ずるものがあったんじゃないだろうか。


ひかりさんの想いが、眠っていた千尋さんの想いを呼び起こしたとしたら。


ポルターガイストが起こり始めたのは6月の中旬。


ちょうど、ひかりさんが部活に顔を出さなくなった時期と一致する。


「でも、それだと部室に出る意味が分からなくないですか?」


嵐役に恨みがあるなら、嵐役の子だけを狙えばいい。


それなのに、ポルターガイストは部室で起こるとなると、筋が通らない。


「あの壁の名前じゃないかな。ほら、嵐役の名前と青役の名前が書かれるなら、そこに強い想いがあってもおかしくないでしょう?」


確かに。


それなら不自然な点はないし、演劇部のみんなも納得できるだろう。


あぁ、久しぶりの前進だ。


あたしはゆっくりと椅子の背もたれに体を預けた。


ただの憶測に過ぎないけれど、ずっとモヤがかかったように何も分からなくて、その度に岩橋さんのあの涙を思い出していた。


もう関係ないと知らんぷりできるほど、遠い人ではなかったし、どんなに小さなことでも、力になりたいという想いは、変わっていない。


まだ解決、とまではいかないけど、前に進んだっていう実感が、あたしを包んだ。
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