幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「……てか、白川先輩。さすがに冷房の温度低すぎじゃないですか?……げ、20℃!?」


あたしは両手で体を抱く。


いくらなんでも、制服の夏服に20℃は体に悪いでしょ。


機会に表示された数字に目が点になる。


「灰野、寒い?」


「私は上羽織ってるから」


カーディガン姿の美保さんが首を横に振って、白川先輩がニヤリと笑う。


「最大多数の最大幸福」


「あたしの人権は!?」


「公共の福祉のため棄却」


な、何が公共の福祉だ!


ここは独立国家か!?


あたしは怒りと寒さでわなわなと震える。


「頭のいい人っていうのは得ねぇ」


「美保さぁん」


「心配しなくても暫くしたら下げる。さっき模試のことで数学準備室呼ばれてたから暑いんだ」


それでも十分涼んでるでしょうが、というのは一応でも先輩だから口の中に留める。


是非とも先に生まれたことに感謝して欲しい。


仕方がないから、生徒会室を出て温まろうとすると、白川先輩がどこへ行くのか、と尋ねた。


「御手洗ですっ!あたしが温まって帰ってきたら、ちゃんと温度下げてくださいよ!」


「分かった分かった。金森見てると暑くなってくるな」


……ほんと、いつかやってやる。


あたしは白川先輩に思いっきり舌を出して、生徒会室のドアをいつもより乱暴に閉めた。
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