幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜



トイレで用を足して、あたしはふと、日向ぼっこをすれば冷えた体が温まるんじゃないかと思い至った。


同じ階にあるバルコニーなら古くなって放置された椅子もあるし、さすがに夏だから人もいないだろう。


あたしはまだ冷たい肌をさすってバルコニーへと向かう。


「あれ、人がいる」


日当たりのいいそこには、3人の先客がいた。


スリッパの色が青色だから、3年生の先輩だろう。


美保さんや白川先輩の2年生は緑、あたしと藤原の1年生は赤色だ。


別にバルコニーが誰のものって決まっているわけではないし、あたし1人が入ったところでぎゅうぎゅうになるってわけでもないけど、うーん、少し気が引ける。


そうなると、残念ながらあたしは冷房地獄へ帰るしかないわけで。


でもまぁ、左腕に巻いた包帯のところだけ日に焼けなくて、跡になっちゃうのも嫌だし。


予定変更。


あっさりと諦めて、くるりと踵を返す。


しかし、聞き覚えのある名前が耳に届いて、あたしは思わずその足を止めた。
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