幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜



「本当にありがとう……!」


深く頭を下げる岩橋さんたちに、あたしたちははにかんで顔を見合せた。


面と向かってお礼を言われるのって結構照れくさい。


「お役に立ててよかったです。行き詰まってばかりでどうなることかと思いましたが」


白川先輩は心底ほっとした表情で笑う。


むわむわと暑さと湿気が篭もる体育館では、既に撤収作業が始まっていて、岩橋さんはその作業を抜けてお礼に来てくれたのだ。


公演中は夢中になっていたから気にならなかったけど、今になって汗が吹き出す。


体育館ってもうちょっと風通し良くならないのかな。


「これであとはちゃんと完成した『青嵐』を公演するだけですね」


美保さんが言うと、岩橋さんは目を細めて、可愛らしい笑顔を浮かべた。


久しぶりに見る笑顔だ。


この笑顔を取り戻せたのだと思うと、どうしても頬が緩んでしまう。


人間、やっぱり笑っていた方が幸せだ。


千尋さんも、今は笑えているだろうか。


笑っていてくれると嬉しいな。


お芝居をしている千尋さんは、とても楽しそうだったから。
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