幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「京子ちゃん、この衣装もう片しちゃっていいかなー?」


不意に、舞台の際で日菜子先輩が声を張り上げた。


日菜子先輩は今日こそ出番はなかったけど、次の舞台では主演だ。


どうかその時には、陰湿な嫌がらせもなくなっていますように、と心の中で祈る。


あれだけ素晴らしい舞台を創るのに、いがみ合ってるなんてもったいない。


でも、あたしたちにできるのはここまでだ。


あとは演劇部の部員が、自分たちで歩いていくしかない。


岩橋さんみたいな、きちんと気持ちを推し量れる人がいるってことに、日菜子先輩もひかりさんも気がつくといいんだけど。


「大丈夫!今日はもう部室に戻しといて!……ごめんね、バタバタしてて」


「いえ、俺たちもそろそろ生徒会室に戻らなきゃいけないんで」


白川先輩が言いつつ、腕時計を見る。


あぁそうだ、あたしたちこれから鍵返却なんだ。


またうじゃけた夏休みに戻るのか、と思うと、なんだか少しうんざりした。


岩橋さんはまたゆっくり観に来てね、と言ってくれた。


あたしたちは笑って約束して、それじゃあ、と手を振った。


藤原が体育館から出ようとした時────
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