幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜



榊第一高校の演劇部は歴史の古い部活だ。


なんでも、この学校が創立される前の前身団体の時からあったそうな。


演劇の賞とかも結構な割合で獲っちゃうものだから、学校も特別扱いしちゃって(たぶん学校にそのつもりはない)、午前中は旧体育館丸々が活動場所として演劇部に割り当てられていた。


あたしたちが旧体育館に着くと、演劇部の部員たちはエチュードの真っ最中で、広い体育館を思い思いに動いていた。


「どれが岩橋さんだろ。しかも声掛けていいんですかね?」


「さぁ……」


こればっかりは美保さんも肩を竦める。


みんなお芝居の最中だから、声をかけるのはなんだか気が引けるのだ。


入口でしり込みしていると、不意に舞台のそばで活動していた女子生徒のひとりがこちらに気がついた素振りを見せた。


彼女はそばにいた生徒に何かを言い置いて、パタパタとこちらに向かって走ってくる。


「すみません、何か御用ですか?」


「えぇ、目安箱の件でちょっとお話を伺いたくて。岩橋京子さんって今日来てます?」


訊ねた白川先輩に、彼女は額から落ちた髪を耳にかけ直して、ぺこりと頭を下げた。


「私が部長の岩橋です。…あの、まさか来て貰えるとは思わなくて……ありがとう」


そう言って、岩橋さんは少し疲れたような笑顔を見せた。


やっぱり呪いとやらが相当堪えてるのかな。


「部活の方は大丈夫ですか?」


生徒会は夏休み前に3年生が抜けるけど、演劇部は秋の文化祭で引退する。


練習の時間を割いてしまうと思ったのか、美保さんは体育館の中を伺いながら聞いた。


「私は3年だけど演者じゃないから」


軽く手を振った岩橋さんは、部室を案内すると言って体育館前にある階段を降りていく。


体育館で活動する部活の部室は、体育館に隣接するプレハブ棟にあるのだ。
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