幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
「っのどかさん……」


どうして気が付かなかったんだろう。


のどかさんも、ずっと嵐と大切なワンピースを返して欲しかったのだと。


「日菜子先輩の怪我が引き金になったのは、千尋さんだけじゃなくてのどかさんもだったんだ……!」


あたしが叫ぶと、3人は目を瞠り絶句した。


「じゃあこの追悼公演は意味が無かったっていうの……!?」


美保さんは手を握りしめる。


のどかさんに衣装を返してあげたくても、あのワンピースはもう火の中だ。


何故か燃え尽きず、形を保ってはいるけれど、あそこから取り戻すのは不可能に近い。


手に入れているはずなのに、どうしてのどかさんは叫び続けるんだろう。


何も出来ない。


あたしたちにはもう、手に負えない。


炎はあたしたちを嘲笑うかのように火力を増し、地響きが泣き声が悲鳴が、体育館を包んだ。
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