幽閉の鬼火〜榊第一高校生徒会の怪奇譚〜
最初に切り出したのは白川先輩だった。


「それで、呪われているというのは」


「……ものが突然なくなるの。特に衣装が多いかな。ちゃんと部室に置いたって確認までしてるのに、ふとしたらなくなってて。初めは勘違いだろうって思ってたんだけど、あまりにも頻度が多くてね。それに……」


「それに?」


あたしが聞き返すと、岩橋さんは震えた声で続けた。


「女の人の声が聞こえて、なんて言ってるかは分からないんだけど、気味が悪くて。部室に置いてあるものがぐちゃぐちゃにひっくり返されてる時もあって、皆怖がっちゃって泣きながら“もう使いたくない”って」


プレハブ棟には防犯カメラが付いているから、事件性はないはずだ、と岩橋さんは言う。


「先生に相談はしなかったんですか?」


「元に戻ってるの」


「はい?」


「なくなった衣装もぐちゃぐちゃになった部室も、目を離した隙に全部元通り。先生は信じてくれないし、お祓いとかもなんだか怪しいじゃない?」


「それでうちに……」


なるほど、学校は頭が堅いからオカルト的なことは全否定だもんなぁ。


「あとは藤原くんがそういう知識があるって」


「ん!?」


今なんて?


藤原が心霊現象に強い?


「そ、そうだったの、藤原」


「誤解。ホラーゲームならやるけどリアルは管轄外。どこから回ったのか知らないけど、あんたらの勘違いじゃないっすか」


「こら、相手は先輩。言葉遣い」


美保さんにつつかれても、藤原は聞いてるのかいないのかよく分からない。


直接的な先輩でもないから別に構わない、と岩橋さんは言ってくれたけど、無駄にハラハラさせるのはやめて欲しい。


そうでなくても学校でホラーなんて心臓に悪そうなのに。
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