交錯白黒
「うーん……」
やはり、付け焼き刃のピッキング技術では難しいか。
案じていたが、しばらくして、ガチャリ、と滑りのいい音がしてひとまず安心した。
親父の部屋に無断で入ったときには、親父の周りの人間に親の仇か、というほどの剣幕で叱られた。
当の親父本人は諦めたような表情で俺を見、特に戒めもしなかった。
そして俺は、親父の部品であることを知った。
なのでその件以来、親父は部屋に鍵を設置するようになったのだ。
二度目に侵入した親父の部屋は、記憶より埃臭く、乱れていた。
白い紙がバラバラに積まれており、その中心に堂々とパソコンが佇んでいる。
この中から証拠を探し出すとなると気が萎えたが、恐らくこの紙の殆どは証拠になるであろうのことに気付き、胸の奥で炎が揺れた。
足元に舞い降りた一枚の紙を拾う。
「検査結果 健康状態は良好。以前よりプロトタイプに近い。以上」
プロトタイプ、に、近づいている。
目眩がし、口元を押さえながらその場に膝をついた。
やはり、そうなのか、そうなる運命なのか。
俺は抗えないのか。
無意識の内に歯ぎしりをしていたらしく、顎が痛む。
嫌だ。
俺が俺でいることが耐えられない。
俺は生まれ変わりたい。
この、罪に塗れた肉体を捨てて。
……大丈夫。君は、君だからね。
いつかの少女の言葉を渇望している俺は、脆弱だ。