交錯白黒
俺は度々問診を受けさせられた。
好きなものは、嫌いなものは、嬉しかったことは、悲しかったことは……。
年齢が上がるにつれて、質問はもっと深く、そして確実に俺の心の全てを暴くような惨い設問が増えた。
俺の体は細胞一個にあたるまで、彼らに把握されている。
如月、お前と病院で出くわしたとき、俺、病院着だっただろ。
抜け出してきた途中だったんだよ、検査から。
とても耐えられないと何年も思っていて、そのとき、たまたま堪忍袋の緒が切れて、逃げるついでにお前を病室に連れていった。
親父も頻繁に検査を受けているが、問診はない。
何の検査かは知らない。
でも、体のどこが悪くたって親父は非常に優秀だ、その事実は変わらない。
優秀じゃなかろうと、親父は親父、オリジナルだ。
俺は自分がない。
なぜなら、俺がいなくても同じ人間がいるから。
愛の無い、無機的な命。
周りの人と比べて、潰れてしまいそうになるから、俺は身内以外の人と深く関わらないようにした。
俺の代わりはいる。
俺は要らない。
俺はスペアなんだよ。
だから、俺は愛されない。
"愛"を知らない、わからない。
だから、愛せない。
愛し方なんてわからない。
だから、人と一線を引いた。
人と関わらないようにした。
人の愛を見たくも、触れたくもなかった。
俺からすれば、皆の愛は熱くて。
火傷しそうだと感じるから、感じてしまうから。
俺が複製だと思い知らされているようで、ヒリヒリと痛むから。
だから、俺は冷たいんだ。