交錯白黒
WhiteQueen。
白女王と呼ばれる彼女は、孤高の天才として恐れられていたという。
中等部のときに、である。
また、心臓病を患っている儚さや、切れ長の瞳かれ発せられる冷ややかな光、それ相応の態度や包み隠さない芯のあるところが、皮肉も込められ、白女王と称される所以だそうだ。
俺は編入生だから、彼女の中等部のときの様子は知らない。
噂によれば、彼女は、中等部一年の頃からずっと、テストで、学年1位を取り続けていたそう。
必死になって勉強している素振りも見られず、1位をキープしても喜ぶ表情も、安堵する表情も見せないそのクールな態度は、一部から反感を買っていたようだ。
高田も、その一人であったと、俺の友は言う。
今ほどあからさまに毛嫌いしていた訳ではないが、その代わり、彼女の目につかないところで愚痴をこぼしていた、と。
それがガラッと変わったのが、高等部に上がってしばらくしてからだった。
つまり、俺が編入した直後、もう少し正確に言えば俺の弱みを握った次の日のことであった。
あいつは、どこから掴んできたのかわからない、如月が捨て子だというなんとも弱い動機でイジメをスタートさせた。
俺は気づかなかった。
その頃あたりから、如月は前髪を延ばし始めていた違和感にも気づかず。
今だから冷静に分析できるが、あれは俺への当てつけと、今まで溜まってきた彼女への負の感情を、発散させるための無理矢理でっち上げた動機だったのだ。
俺の前で、イジメをしなかったのは、俺が気づいたときの衝撃を大きくさせるためだろう。
自分の弱みを握られた俺は、自己防衛しか見えてなかった。
だから、如月がどうなろうが、俺には関係ない――俺は、俺を騙した。
本当は、ズタボロだった。
俺は自己防衛に回った。
見捨てた。
恩人を。
編入して初めて見たとき、電流が走ったように痺れた。
不思議なくらい懐かしくて、涙腺が緩んだ。
この人だと思った、あのときの少女は。
でも、もっと前から、もっと深い関わりを持っているのではないか、という気もした。
それだけ、安心したのだ。
だから、守ろうと思ったのに。
守るべき人、俺の恩返しをしようと思ったのに。
思いがけず、逆鱗に触れられ、抑えられなかった。
俺は自分で距離を遠ざけた。
……はやく、謝んないとな。
許して貰えるものでもないだろうけど。
彼女の優しさ、儚さ、不器用さに反応する俺の気持ちに、ケリをつけたい。