交錯白黒
遥斗。
千稲ちゃん。
母。
橘くん。
高田さん。
瑠璃さん。
橘くんのお父様。
私。
そして、生み親――。
何かが私を貫いたような衝撃に襲われ、急いで推理を組み立てる。
これなら、今までのことが辻褄が合う。
でも、裏付ける証拠が弱すぎて、確証が得られない。
いや、裏付ける証拠なら、ここを捜せばある筈。
だがその証拠は。
私には、守らなければならないものが、まだある。
だから、これだけは。
しかし、そうしてしまえば、この推理は橘くんや瑠璃さんに伝えられない。
真実を明らかにすれば、秘密が明るみに出てしまう。
でも。
橘くんの、今すぐに壊れてしまいそうな哀しい表情が私を躊躇わせる。
激しい葛藤の末、私の出した答え。
そのノートを引き裂き、ゴミ箱に捨てて本棚に手を突っ込んだ。
「患者 橘恋藍
病名 拡張型心筋症」
と記された紙。
クローンについての論文。
やっぱり――。
ぐしゃりと紙を握った。
私の答え。
不正解かもしれない。
正解は、きっと誰も知らないだろう。