交錯白黒
「え、逆ナンですか」
「な訳ねーよ。話聞いてたか」
怒りが感じ取れるような声色だったので、私はしゅんと落ち込んだ。
「それで、資料室に入りたかったらしいんだけど、まあ、そこが暗くて埃まみれでね。魔王の巣窟みたいなんだ。で、付いてきてほしいって言われて付いていったんだ。そしたらね、何があったと思う?」
ニヤニヤした顔で聞いてくる瑠璃さんに、わかるわけないだろう、と苛々する。
「親父の卒アル写真、文集を見つけた。そして、その中に櫻子か恋藍、もしくはその両方が写ってた」
何故わかったのだ。
橘くんは瞳を閉じ、両腕を組んで銅像のように動かず、ただそれだけ推理した。
「おー、正解ー」
瑠璃さんは驚きと、すぐに正解されたからか、落胆が入り混じった表情で拍手をしている。
私はついていけず、取り敢えず橘くんの端正な横顔を見つめた。
そんな私の視線に気がついたのか、橘くんは目だけをちろりと私にやったあと正面に戻してから説明を始めた。
「親父の怜悧高校の卒業証書を紙の山から見つけた。つまり親父は怜悧高校の卒業生。それは瑠璃にも報告していたから知っている」
親子共々、頭がよかったのだ。
頭の良すぎると、幸せを逃がすこともあるらしい。
「今の話題からは卒業アルバムという単語が出てきただろ。卒業アルバムといえば、写真と、文集くらいだ。親父のものが載ってたとしても不思議は無いから、わざわざ報告する必要はない。それ以外となると、まあ可能性は広がる訳だな。だが、瑠璃はクイズ形式にした。誰でも考えれば答えられるってことだ」
言われてみれば、そうである。
「今、俺らの中で珊瑚のことでわからないところは、恋藍、櫻子、珊瑚の接点だ。それを見つけたから、クイズにして伝えたんだろ」
「あーあ。全部見破られちゃった。面白くないなー」
瑠璃さんは欧米に住んでいる人のように両手と首を同時に竦めた。
私は、流石、というか、物凄く細かいところまでアンテナを張り巡らせているのが尊敬すると同時に、脅威の対象になる。
「ちなみに、そのコピーがこちらでーす」
「コピーとってよかったんですか」
「え?ま、コレでよろしく」
瑠璃さんは人差し指を唇の前で立て、チャーミングにウインクをした。
調子いいんだから。