交錯白黒
沢山の卒業生の中、彼らはとても近い場所にいた。
珊瑚を中心に、右前に恋藍、後ろに櫻子。
「この子が、恋藍。初めて母親を見るのは、何か、感動だね」
「まあな……やっぱ、若いな」
照れたように、控えめにはにかむ彼らは思春期特有の幼さ、あどけなさがあり、初々しい。
一体、彼らに、何があって罪の道に踏み込んだのだろうか。
人の命を操作しようと思ったのだろうか。
「恋藍だけ合成っぽい。当時はその技術も今ほどじゃなかったから、よく見たらわかるね」
「原因は持病でしょうね」
「……」
特に何も考えずに言ってしまったが、皮肉っぽく聞こえたのかもしれない。
「こういう表情見ると、今まで溜めて爆発しそうだった恨みや怒りが抜かれるみたいで怖いな」
「そうだね。まだ汚れてない、清純で幼い感じは憎めないよね。まさか、とんでもない罪を犯すなんて想像もつかない」
「人は、変わりますからね」
そう、人は、変わるから。
簡単に。
「……天藍ちゃん、DNA鑑定受けてみない?僕と」
そよ風のような声が私の耳を撫でた。
でもその言葉は雷よりも強烈で。
「え?」
「琥珀が言うんだ。僕と、天藍ちゃんが似てるって」
困惑したように微笑み、首を傾ける瑠璃さんの後ろに白い羽が見えてくるようだった。
純白は、罪だ。
天使は、自覚のない悪魔なのである。
「この写真を見て、わかった。あの天藍ちゃんのプロトタイプかと思われた女性は、恋藍だ」
どくん。
「僕にも、天藍ちゃんに似てる、あの女性。でも、よくよく考えたら、それって天藍ちゃんと僕が似てるってことなんじゃないかって」
ごくり、と生唾を飲み込むと、喉は潤うどころかさらに水分を持っていかれた。
「パーツ毎に似ている部分が違う感じだから、パッと見は似てない。でも、細部を見ていくと、似ているらしいんだ」
「でも、鑑定してどうする気ですか」
「謎に直接は繋がらないかもしれない。でも、何かしら役には立つだろう。どう?」
「お断りします」
私は視界を瞼で遮断してきっぱりと断った。
布団を挟んで膝の上で重ねた両手からはもう最早体温を感じなかった。
「何で?」