交錯白黒
「琥珀と……俺の、親父も、持ってるんだ。その、血」
……は?
「え、な、何?どういうこと?」
瑠璃さんと橘くんの凍りついた表情に、戸惑いばかりが先行する。
「実は、この前の事故のとき……琥珀の血を輸血したんだ。黄金の血、だから」
そういうことか……っ!
電撃的な繋がり方に、開いた口が塞がらない。
ならば今、かなりまずい状況にある。
「こんなに珍しい血が、こんなに近くに居住してるなんて、偶然か?それにしては、奇跡すぎないか?」
「そうだね……偶然の可能性も否定はできないけど、何か必然になる鍵があるんじゃないのかな。でも、黄金の血は遺伝性のものではないし……」
それまでの話を総合して、私はある仮説を思いついた。
これなら……。
「私は、クローンじゃなくて、ゲノム編集された人間なんじゃないかしら」
「デザイナー……ベイビー……ってことか?」
橘くんが取り乱し、その冷徹な瞳に焦りの色を浮かべる。
瑠璃さんは、ただ暗い。
「そうよ。それなら、瑠璃さんや、恋藍さんに似ていること、そして特殊な血液型を持つことを説明できるんじゃない?」
私は、蠢く罪悪感を閉じ込め、真剣な表情を被り、話す。
だが、こういうときに限って瑠璃さんはとんでもなく鋭いのだ。
「そう、だね……でも、ゲノム編集ベイビーが日本で誕生したのなら、天藍ちゃんは何かの研究施設に狙われるとか、そういう非日常的なことが起こりそうなものだけど」
「隠蔽したんじゃないですか?」
「何の為に?目的が読めねぇよ」
こんな危険を侵してまで作るやつが隠すかよ、とでも言いたげである。
「もしくは、一部の人間は知っているが、とんでもない圧で口止めされてる、とか」
「……ここでゴタゴタ言ってても仕方がねぇよ。役割分担だ」
橘くんが瞼を下ろし、額から手のひら滑らせて髪をかきあげた。
「如月は動けねぇから今回は待機。瑠璃は恋藍のDNAが採れそうなものを探せ。俺は親父の部屋にもう一回侵入して、クローンやデザイナーベビーが作られたかどうかなど、詳しく調べる。それぞれの仕事をよろしく」