交錯白黒

返答無し。

これはどっちなのだ、正解、不正解。

「目的は何だ。名誉か?肉体か?それとも……事故、なのか?」

カタカタと小刻みに手が震えているが、大きな背中で表情は見えない。

もう少し、踏み込むか。

「如月天藍は、デザイナーベビーなのか」


ひゅ、と風を切るような鋭い音がしたかと思うと、手の震えは落ち着き、ドアノブを包むようにして強く握った。

そしてゆっくりと……大人の余裕、とでも言えばよいのだろうか。

先程と一切変わらぬ表情で振り返った。

「俺はデザイナーベビーなど作っていない。如月天藍は作られた人間ではない」

「ちょっと待て、じゃあ何で如月のことを」

バン!

俺の言葉を無理やり断ち切るように、力任せにドアを閉じられた。

如月天藍は作られた人間ではない。

人間から生まれた、ということだろう。

何故、如月のことを知っている?

如月のことを知らなく、関係が無いのなら、そのような少女は知らない、とでも言うだろう。

わざわざ名前を反復し、作られた人間ではない、などという回りくどい言い方はしないだろう。

一体どういう繋がりが……?

それに、デザイナーベビーという言葉自体には反応を示していた。

親父に何らかの関係があるはずだ。

それに、こんなボロを出すということは親父は心の中ではかなり動揺していたのだろう。

きっと、真実から俺らはそう遠くにいない。

顎に手を当て、様々な仮説が頭を過る。

唐突に、如月の透き通るような顔を思い出す。

< 156 / 299 >

この作品をシェア

pagetop