交錯白黒
「あのツンデレ女ぁ〜っ」
あのあとどの角度から問い詰めても「行きたい」とは言わなかったのだ。
琥珀兄が「好き」だとも。
もうバレバレだし、本人も気づいている筈なのに、自分自身を騙して、本心を出さない。
全く、面倒臭い姉である。
千稲や瑠璃兄のような素直さを身に着けてほしいものだ。
まあそれは琥珀兄にも言えることなのだが。
姉は、交友も、恋愛も、家族の愛も、きっと、経験してこなかった。
遠慮気味に言っても、姉の寿命はそう永くないだろう。
だから、楽しんでほしいのだ。
青春を。
「……あ」
そうだ。
俺はスマホを取り出し、耳に当てた。
天藍姉の誕生日は8月17日、もうすぐだから俺からの誕生日プレゼントということでありがたく受け取って頂こうではないか。
後でついでに瑠璃兄や琥珀兄の誕生日を教えてやろう、その日に天藍姉がとんな反応をするか見物である。
コール音が鳴る中、ちょっぴり仕返しの気持ちを感じ、クスリと笑った。