交錯白黒
「真実を見つけるのよ。そして、見返してやんなさい。場合によっては、ね。まあ、今までのは私の経験上言えることだから、無視でも結構よ。この考え方が正解かどうかなんて、人によって違うんだから。ただ、命だけは大切にね」
私が勉強を必死でしていたのも、母の興味を引くためだった。
つまり、スタート地点は貴女と一緒。
でも、入院生活が続き、何だか段々……どうでも良くなってきて、勉強を止めたのだ。
「私があんたになれないって言ったのは、もしかして……」
捨て子の空虚さと、病気の無力さが、空っぽのはずに重くってね。
私以外、誰にも耐えられないだろうと思ったの。
そうでもしないと、重みにやられるからね。
高田さんは赤い唇をくっと歯で押さえると華奢な腕で目元を擦った。
「あーあ、あたし、今まで何やってたんだろ。あんたのお陰でちょっと目が覚めたかも」
溌剌とした声が、彼女の表情を余計にミスリードする。
そのため、掛ける言葉が見つからず、押し黙っていると、彼女がばっ、と顔を上げた。
すっきりと冴え渡っているように見えた。
「今まで悪かったわ。んで、ありがと」
フッと妖しげな微笑は、花火に彩られ、また、くっきりと陰影も表れてより摩訶不思議に見える。
「警察、連れてく?それなら大人しくするわよ。証拠もたっぷりあるしね」
おどけたように両手を突き出す彼女の指先は、やっぱり血とネイルで真っ赤だ。
わかってるくせに。
「いかないわ。面倒だもの」
「ふーん」
興味無さげな吐息まじりの台詞を吐くと、高田さんはツカツカと私の前に歩み寄ってきた。
「あたしはあんたみたいにカッタイ頭じゃないんでね。あたしは、あたしの生き方を良い方に変えてやるわ。あたしは皆に好かれたいから」