交錯白黒
言わせないでよ、馬鹿。
「本当に、それだけか?」
「琥珀」
未だ疑う橘くんを瑠璃さんが優しく、それでいて抗えない威圧を感じさせる口調で嗜めた。
「……悪かったよ」
「ごめんねー、僕等寝相悪くってさー」
「いえ……私こそ、勝手に怒っちゃってすみません……」
瑠璃さんが無理やり晴れさそうとした暗雲は寧ろ重みを持ちその場を支配する。
何だ、この、すっきりとしない感じは……。
いつもだったもっと、こう、瑠璃さんがしつこくイジってきたりとかしそうなものだ。
少なくとも、この反応を見る限りでは私に抱き着いて寝ていたことに羞恥は感じていない。
窺えるのは、焦りと後ろめたさ。
そのような考えに陥るのなら、自分だけ勝手に気にして、慌てて、恥ずかしがって、避けて、それで、少しだけ喜んで。
その目まぐるしい感情の変化は、私だけが感じていた、なんて阿呆みたいで少し傷ついた。
「……ごめんね、天藍ちゃん。一個、謝らないといけないことがある」
「おい、瑠璃……」
「ごめん、琥珀。やっぱり黙ってるなんて
、できない」
少し揺らいだ、それでいて芯のある凛とした声でそう橘くんを制止する。
ああ、嫌な予感がする。
今まで築いてきた防壁が頼りなく思えてきて――。
「僕は、君に内緒で、DNA鑑定を行った」
「僕と、君と、琥珀とで」
「結果から言うと、」
「僕らは血が繋がっているのが判明した」