交錯白黒
「……それはコッチの台詞だよ。お前のほうが冷静そうに見える」
「そうでもしないとどうなるかわからないからでしょ」
語尾が揺れたのを気にしてか、咳払いを一つして、言葉を紡いだ。
「何で、引き離されたんだろう、ってね」
凪のように静かな声だったが、それは哀しみと怒りに満ちていて、音もなく揺らめく青色の炎のようだった。
俺だってそう思うが、ここで俺が同調してしまうと、ヒートアップして堰き止められなくなってしまうに決まっている。
必死に感情を押し殺した。
「それはわからないけど……恋藍は櫻子にお前を託したとも考えられるぜ、何か事情があって」
その炎で自分自身を焼き尽くし、朽ち果ててしまいそうな予感がして適当を言ってみる。
あながち的外れでも無いはずだろう。
すると、ゆっくりと頭を上げてにわかに勢いづいて唇を動かした。
「……恋藍さんが亡くなったのって……橘くんが2才のときだったわよね」
「……そうだが」
「私がお母さんに引き取られたのも、2才よ」
「つまり、恋藍の死と俺たちが離れ離れになったのは何か関係がある?」
如月は力無く頷く。
それもそうだ、これだけの衝撃的なことを聞いて正気を保っていられる人間なんてそういない。
重苦しい歎息をつくとそこは厭悪と悲憤が這い回る地獄の空間となった。
やはり、話さないほうがよかったのではないか、瑠璃。
クラスメイトとその兄と血が繋がってて、その親が犯罪者で捕まっておらず、片親は既に他界。
こんな家庭と自分が深く関係しているなんて突然告げられたら、どんな複雑な気持ちになるだろう。
ギシッ、という畳の軋む音が背後からした。
瑠璃の大きな瞳が目一杯開き、溜まっていた涙が頬から伝っている。
そして、一言。
「……お、親父……!」
「は……?」
連られて俺も振り返ると、そこにはDNAの鑑定結果の通知書を片手に俺らを見下ろす、冷血漢が仁王立ちしていた。
「どういうつもりだ、瑠璃、琥珀。そしてそこの少女よ」