交錯白黒
「じゃ、これからの方針、決めてくぞ」
そう口火を切ったのは、生徒会長最有力候補、我らが琥珀である。
「まあ、方針ったって高田の父親と接触できなけりゃどうにもならねぇんだが……そこが問題なんだよな」
嫌疑を晴らす、なんて大口叩いておいて情けない台詞だ。
「そうだね……仕事場とか自宅とか直撃する?」
「仕事場は駄目だ。事情を詳しく知らなくとも、身内だから匿う可能性が高い。自宅は……マトモに話をしてもらえるか微妙だが、これ以上の案がでなければ最終手段として採用だな」
「そっかぁ」
半分諦めを含んだため息と一緒に、そう返した。
琥珀は最終手段としているが、僕らの立場、時間、費用諸々を考慮すれば自宅に突撃が最善なのではないだろうか。
家なんて、タカタレイカという子を琥珀が尾ければいいだけの話。
最も簡単で、かつ、成功率が高めだと、僕は踏んだのだが。
「私は外堀から埋めていって追い詰めたほうが確実だと思う。そうね、例えば……この家にはクローンの研究資料があるんでしょう?そこから高田華斗が関わったって証拠は見つけられない?」
「確かに……逃げられたりしたら困るもんね……」
確かな証拠を提示して、詰ませてしまえば突然自宅へ押し掛けて裏付けの薄い推測より、罪を吐く可能性が跳ね上がって高くなる。
何せあの紙の籠城だ、親父の部屋を捜索すれば高田の関係した痕跡の一つや二つは出てくるだろう。
「性格悪っ」
「考え方に性格の悪さが滲み出てるわね」
悪意に染まった楽しげな声音が耳に入り、一度思考停止して顔を二人に向ける。
しかし彼らがにやつきながらイジっていたのは何と。
「えぇっ、僕?」
「やっぱり、瑠璃さんはイジられるの向いてませんね」
「あぁ。面白くねぇ。イジる側の人間だな」
「あのねぇ……」
好き同士が意気投合したらそれはもう、傍から見ればリア充なんだよ。
そして何故かお互いが勝手に引け目を感じてくっつかない、非常に残念で意味不明な距離感。
丁度磁石のN極同士のような。
この僕の隔靴掻痒も考えてくれよ。
「そんなにイジって欲しいなら後でたっぷりイジり倒してあげるから、先に親父の部屋行くよ。証拠見つけるんでしょ」