交錯白黒
「……っう……ふ」
頬から日記帳に涙がボタボタ落ちて、沢山の染みができる。
拭っても拭っても止め処なく溢れてくる。
今まで溜めて、溜めて、溜めてきた分の悲しみと寂しさが爆発した。
「橘くん……っ……橘くん!!」
あの医者、『最新の技術』だなんてほざいていたが、ドナーを特定させないための嘘だったのだ。
8年間、騙された。
そして何も知らない8年間の間も……そして今も、橘くんが、私の中で生きてる。
ああ、なんて罪な人なんだろう。
あんな冷たくて、鋭いのに、どうしてこうも、優しいの。
……いや、優しくなんてない。
酷い。
私は、早死にしたって、君と一緒にいたかった。
私の気持ちを伝えてれば未来は変わってた?
残酷な人。
私、君を騙したのよ。
深く傷つけたことも、怒らせたことだって沢山ある。
ずっとずっと、騙して、まだ謝ってなくて。
悔しい。
もどかしい。
こんなにも近くにいるのに、会えないなんて。
「もし自分が死んだら、天藍ちゃんに全てを擲つ覚悟で生きてたんだ、琥珀は。それだけ琥珀は君に感謝していたし……」
何よ、それ。
もっと自分の命、大切にしてよ。
生を受けたものには、生きる責務が、あるんでしょ。
私みたいな罪人に、使っちゃ駄目よ。
馬鹿ね。
ホント、馬鹿。
自惚れじゃないわ、貴方、私のこと愛していたでしょ?
なら、どうして置いて逝ったの?
やっぱり、神様なんていない。
いたとしても、相当意地悪だ。
一人の人間にこうも酷い仕打ちを与え、かつ……哀しいくらいの幸せを、放り込むのだから。
瑠璃さんが私の肩を抱き、頭を撫でる。
同じようにしてくれた橘くんの温もりを思い出して、更に涙が止まらなくなった。
ねえ。
ずっと、すきだった。
だいすきだった。
あいたかった。
ねえ、あいたいよ。