交錯白黒
私はなんて勘違いをしていたのだ。
しっかりと調べもせず、お世話になった人に、早々に決めつけ、疑って。
……恥ずかしい。
自己嫌悪と恥ずかしさから生まれる熱、瞳を潤わす水分で、これらがどの程度のものなのか、お分かりであろう。
私は、やっぱりどうしようもない人間だったのだ。
「も〜、そんなに赤くなんなくても、僕、怒ってないよ?」
からかうように、クスクス、それでいて上品に笑ってくるものだから、ただでさえ熱があるんじゃないか、という全身が更に火照った。
少しずつ汗も生まれているくらいだ。
「それに、僕のほうも何か勘違いさせるような行動をしていた訳だし……ごめんね。顔、上げなよ」
「無理ですっ。ホント、すみませんっ」
「こーら」
幼い子をあやすように甘い声色で囁くと同時に、大きな温もりが私の頬を覆い、優しい力で顔が上げられていた。
視界いっぱいに、おどけたようにちょっと怖い顔を作っている知成さん。
怖い顔といっても、少し眉を吊らせているだけで、何も怖くなかった。
また、どくん、と心臓が蠢く。
ただ、知成さんの視線が、ただの知り合いに向けるような視線ではなくて……何かを慈しむような、優しくも哀しい含みがあった。
「僕、怒ってないって言ったでしょ?勘違いは誰にでもあることだよ」
真っ直ぐな視線が染みて、懐かしいような、温かいような、不思議な気持ちに陥る。
知成さんは私の両頬から手を離すと、私の頭をポンポン、と軽く叩いた。
「弟想いだね。偉い偉い」
そこで、ようやく気付いた。
……私、完全に子供扱いされてるよね?
むっとして、言い返そうかとも思ったが、自分が派手な勘違いをしておいて、それこそ子供だろう、ということでやめておいた。
「それで……あの……その」
知成さんが言葉の歯切れ悪く、モゴモゴと何か口の中で言っているが、何も聞き取れない。
「僕からも、ちょっと、あって」
忙しない瞳孔の動きと、くぐもった声色が嫌な予感を駆り立てる。
「天藍ちゃん、学校行ってないって、本当?」