交錯白黒
――彼の名は、橘 琥珀。
私が通っていた高校の、クラスの学級委員長。
生徒会、しかも会長就任は確実だと言われている。
うちの学校は中高一貫校で、彼は編入生なのだが、それでこの人望の厚さは異常である。
頭脳明晰、冷静沈着、容姿端麗。
透明感のあるこれらの四字熟語にぴったりの人物だ。
……ただ、冷静沈着、というのは度が過ぎて、冷徹の域まで行っている。
凍てつくようなオーラが、近寄り難いと私は感じる。
が、周りはそうでもないらしい。
皆、橘くん橘くん、と蟻のように群がっている。
その性格、容姿からついたあだ名が。
――BlackPrince。
黒王子。
言われてみれば、懐かしいような優しい雰囲気を纏っているような気が、しないでもない。
どちらにしろ、彼の今までの行動を振り返っても、私に話しかけるようなことはしない。
私は、彼に嫌われているから。
良いとも、悪いとも言えないような、ぼんやりとした予感が疼く。
何事も無く、真っ白な日々が過ぎていくことを願った。
だけど、これは、ほんの序章に過ぎなかったことを、後に思い知る。