交錯白黒
琥珀があんな粘つく脅し方をするなんて珍しい。
ザラリとした襖に耳を当てながら思考を巡らす。
何だかあの2人を取り巻く空気に違和感を感じたので、二人きりにさせてみたら、案の定だ。
あいつ、女の子相手に脅しだなんて……。
それだけ天藍ちゃんを必用とする案件なのか。
親父の日記なんてものも、初耳だ。
親父が日記だなんて柄にあってないし、研究に没頭していたのか、多忙だったためそんなものしたためている様子もなかった。
天藍ちゃんの写真を持っていることは、僕も知っていた。
琥珀と僕の2人で見つけたからだ。
それで、琥珀がこの子に似ている子が学校にいる、というので名前だけ聞いた。
それが天藍ちゃんで、彼女に教科書を持っていくのを躊躇ったとき、ついでに偽名を使って潜入したのだ。
すぐバレてしまって殆ど意味はなかったけど。
その写真と一緒に綴られた文字が、『罪を償いたい』なら、あの人に当てはまる事柄は、アレしかないと思う。
それなら、僕のあの仮説もほぼ立証されると言ってもいいだろう。
しかし、やはりいくつか疑問点が残る。
プロトタイプは……?
それに、あの人は反省なんてしているのか?
止めだ、情報が足りない。
回路がショートした頭を小突き、別の回路を形成する。
琥珀の脅しに出てきた、「タカタ」という人物。
そして、学校に通い始めてからドロドロに濁った瞳。
目の下の青黒く濃い隈。
喉をすぼめているようなくぐもった声。
そして何より、時折袖から覗く、沢山の痣。
ツッコミの精度などは特に変わっておらず、日常生活に大きな異変が見られないことから、また自分自身を騙しているのだろう。
自分は苦しくない、平気だと。