交錯白黒
ドゴッ
「痛ってぇー!!」
首が叩き落されたかと思った。
「何すんだよー!」
「お前がおかしなこと言うからだろ!」
だからといって、暴力をふるうのはよくない、と窘めようと琥珀をみて怒りが飛んだ。
耳が、赤い。
天藍ちゃんに関しては、湯気が出ているのではないか、というくらい顔全体が真っ赤だ。
わかりやすすぎて、一欠片の楽しみを見出す。
「何がおかしいんだよ。事実だろ?」
「なっ……!」
ニヤけると余計怒りを増幅させるだけだとわかっているのに、どうしても緩んでしまう。
「瑠璃さん、これくらいはわかってください。橘くんが私のこと好きになるわけないじゃないですか」
「その通りだこの野郎、変なこと言いやがって」
ため息を交えて自身を落ち着かせるように言った天藍ちゃんで、もう少し遊ぶ。
「へぇー、その割にはトマトみたいに顔赤いけど?」
「怒りです!」
十分楽しめたし、まあこのくらいにしておいてやろう、と攻撃を止めた。
「で?天藍ちゃん、交換条件、何にしたの?」
「どこまで聞いてんだコイツ」
天藍ちゃんの赤くのぼせていた顔は正常の白色へすうっと戻り、余裕なさげに固まっていた唇はなめらかに、妖艶に歪んだ。
その表情を見て鳥肌がたつ。
「教えない」
「えーーー!」
僕の反応後、唇だけでなく目にも妖しい笑みを含めた。
「悪戯した悪い子に情報なんて与えませんから」
「くぅ……」
「は、残念だったな」
琥珀が僕の肩をぽん、ぽんと叩き、はっとする。
琥珀……?
「……あのさ、僕も混ぜてくんない?」
「何に?」
尋ねた天藍ちゃんには、あの魔女のような妖しさはもう残っていなかった。
「俺らの親父の悪事暴き。結託しようぜ」
もしも組むなら、俺は橘瑠璃じゃなくなる。
流旗知成で、ぶちかましてやる。