交錯白黒
「それで私は、どんな罪なのかを尋ねましたね。橘くんの返答は、『まだ言えない』それに対し、瑠璃さんの返答は『琥珀がいうまで』が付きました。つまり、瑠璃さん自体は言ってもいいのだが、橘くんは言えないということですよね。なので橘くんが深く関わっていると推理しました。どこか違いましたか?」
瑠璃さんは長い睫毛を鳥の羽のようにバサバサと羽ばたかせると、硬直した。
一体、何があったというのだ。
私の言動にも変な点はなかったはずだ。
「……どうかされましたか」
そろそろ心配になり、黒曜石の瞳に問いかける。
「……いや、その推理力、どこで?」
この人はまた不思議なことを言う、と少し疲れながらありのままを伝えた。
「いや別に、普通じゃないですか」
「え、あ、そう……。ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「……いえ」
瑠璃さんはくしゃりと顔を綻ばせたが、どう見ても演技だ、不自然である。
「で、どうなんです?橘くんは被害者ですか?共犯ですか?」
目に楽しげな、でもその奥で苦しげに歪んだ光がキラリと走った。
「ん、どっちだろーね」
「……わかりました」
私は両手でお手上げのポーズをとって鼻から息を抜いた。
「今日はもう帰ります。お邪魔しました」
「うん。気をつけてねー」
表面上、お手上げの動きはしたが、諦めてなどない。
むしろ捜査官みたいでゾクゾクする。
調査することで得られるどうしようもない快感を予想してしまい、駆け出した。