独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする【番外編】
「熱はないようだな。いつから食欲がないの? 喉の痛みはある? 倦怠感は?」
樹さんがイスに座っている私の目線に合わせて屈み込み、耳の下に手をあててリンパ腺の腫れを確認する。
その勢いにたじろぎ、首を左右に大きく振った。
「どこも悪くないですから、そんなに心配しないでください」
私を見つめる不安そうな表情を目にしたら、胸がチクリと痛んだ。けれど、事実を包み隠さず打ち明けるのは恥ずかしい。
後ろめたさを感じながら、彼から視線を逸らした。
「華。俺になにか隠してないか?」
鋭い指摘に、肩がピクリと跳ね上がる。
「べ、別に」
慌てて返事をしたものの、声が裏返ってしまった。
これじゃあ、隠しごとをしているってバレバレだ。
罪悪感に苛まれ、両手を膝の上にのせて小さく縮こまった。
「もう一度聞く。俺になにを隠している?」
ダイニングに響く、苛立った低い声を聞いたら、すべてを話して楽になりたい衝動に駆られてしまう。けれど“あのこと”は私の問題だ。
下唇を強く噛み、目を伏せた。