独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする【番外編】
「幸せ太りです」
太ってしまったのは、樹さんが「おいしい」と言ってくれるのがうれしくて、調子にのってお菓子をたくさん作って食べたからだ。
「サロンからドレスが完成したという連絡があって、昨日試着したんです。そうしたらファスナーが上がらなくて」
一生に一度の結婚式で身にまとうものにはこだわりたくて、四カ月前にシルク素材のウエディングドレスをフルオーダーした。
それなのに、太ってしまうとは情けない。
しょんぼりと肩を落とした。
「そ、それはショックだったね。でも女の子は少しぽっちゃりしてるくらいがいいと思うけど?」
落ち込む私を元気づけてくれようとしているとわかっていても、素直になれない。
「そんな呑気にかまえている場合じゃないんですよ! 結婚式は一ケ月後なのにオーダーしたドレスが着られないなんて、シャレにならないじゃないですか!」
「う、うん。そうだね。でも俺にはちっとも太って見えないけど?」
樹さんの視線が、頭から爪先へと移動していく。