独占本能が目覚めた外科医はウブな彼女を新妻にする【番外編】
翌日の月曜日。
昼休みになり、コンビニで買ってきたサラダとヨーグルトを食べ終え、切ないため息をつく。
これだけじゃ物足りない。でも、痩せるためには我慢しなくちゃ。
自分に言い聞かせていると、テーブルの上に置いていたスマホがブルブルと震えた。
着信相手は樹さんだ。
スマホを手に取り、食堂から出る。
「もしもし」
『今、薬局の通用口前にいるんだけど、少し出て来られる?』
「はい。すぐに行きます」
忙しい樹さんが、日中に連絡をしてくるのは珍しい。
いったい、どうしたんだろう。
気を揉みながら通話を切ると、急いで通用口に向かって外に出た。
「華」
「どうしたんですか?」
軽く手を上げる樹さんのもとに駆け寄る。
「はい。プレゼント」
「えっ?」
今日は誕生日でもないし、なにかの記念日でもない。
大きな紙袋を差し出されても受け取れずに首をかしげた。
「俺と色違いだから」
「色違い?」
「うん」
樹さんが袋を開けると、中にはスポーツブランドのウエアとシューズが入っていた。
「今度の休み、一緒にウォーキングをしよう」
忙しいなか、私のために時間を割いて買いに行ってくれたのだと思ったら、胸が熱くなってしまった。
運動は苦手だけど、樹さんと一緒だったらきっと大丈夫だ。
「はい。がんばります。ありがとう」
紙袋を受け取り、大きくうなずいた。
「それから、無理な食事制限はしないように。いいね?」
「はい」
大きな手が頭の上にのり、ポンポンと優しく跳ねた。
樹さんの忠告は素直に聞けるから不思議だ。
「じゃあ、そろそろ戻るよ」
「はい」
サラダとヨーグルトだけの昼食を反省しながら、病院に戻っていく後ろ姿を見送った。