ラグジュアリーシンデレラ
「あっ……」

「結野、拾わなくていいよ。」

顔を上げると、店員さんが新しいナイフを持って来てくれた。

「驚かせてすまない。でも、俺の気持ちは結野にしかないから。結婚の話は、全部断っているから、安心して。」

林人さんは、いつも優しい。

私の事を真っすぐ想ってくれている。

でも、林人さんの家は?それでいいの?


「林人さん、井出グループを継がなかったって言うけれど、井出グループはどうなるの?」

「弟が継いでいるよ。弟はまだ独身だから、俺に来た見合い話は、全部弟に振っている。」

「私、思うんだけど。井出グループを継がなかった分、ご両親は結婚相手を社長令嬢に決めたいのでは?」

「結野……」

時々不安になる。

本当に林人さんの相手が、私でいいのかって。

「この前、秘書の亀山さんにも言われたの。林人さんと結婚できると思っているのって。」

「亀山君……余計な事を。」

「別れて欲しいと言われたわ。」

私と林人さんは、顔を見合わせた。

「俺は誰に何を言われようと、結野と一緒にいる事を、諦めないよ。」

すると青志は、ふっと笑みを浮かべた。

「分かりました。ここで俺も敵に周ったら、誰が姉ちゃんの味方になるのって話になる。」

「青志。」

「林人さん。姉を宜しくお願いします。俺、二人を応援します。」

「青志君!」

林人さんは私と手を離すと、青志と固く手を結んだ。
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