ラグジュアリーシンデレラ
面倒に思っている林人さんの手を、私は叩いた。

「だって、気になるんだもん。シンデレラは、地位も名誉も、何も持っていなかったんですよ。」

「そんな事ないさ。」

林人さんは、私を振り向かせた。

「シンデレラは、家族に虐められていても耐えて、そして自分の人生を切り開く勇気を持っていた。」

「あっ、その感覚、分かります。辛い事があっても、この先幸せな事が待っているって信じられて、もしそのチャンスがあったら、迷わず飛び込むみたいな。」

すると林人さんは、私の頭をポンポンと叩いた。

「結野も、そうだよ。」

「私が?」

「青志君の面倒を見る為に二つも仕事を掛け持ちして。それでもへこたれなかった。それに、俺と身分差があるって悩んでいたのに、思い切って俺の胸に飛び込んでくれた。そういうところ、シンデレラとよく似ている。」

私は、林人さんに微笑みかけた。


シンデレラは、好きじゃなかった。

だって、王子様に選ばれる為には、余程の美貌があって、頭も良くて、綺麗な靴も必要だって、思っていたんだもの。

そんな私を、林人さんは選んでくれた。

だから、今だったら信じられる。

シンデレラストーリーは、ここにあるって。


「結野。もう我慢できないんだけど。」

「……私もです。」

そして私達は、また心と身体を重ね合わせて、愛を紡いだ。
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