ラグジュアリーシンデレラ
りずさんがツカツカと、林人さんの元へ行った。

「林人さん、こうなった以上、会社の経営が赤字になるのは、目に見えているわよね。」

「りずさん……何が言いたいんだ。」

「赤字になるような会社と、ウチの宝石店はやり取りできないわ。婚約は解消して頂きます。」

そう言ってりずさんは、自分のバッグを持つと、会社を出て行った。


「社長、朝倉宝石店との取引が無くなれば、もっと赤字は加速する事に。」

「クソッ!何だって、こんな事が起こるんだ!」

林人さんは急いで、銀行に掛け合うように、皆に指示している。

思わず私は、林人さんの元に走った。

「社長!」

「結野……」

社長は皆の前だというのに、私を抱き寄せてくれた。

「大丈夫だから。心配するな。」

「……はい。」

こんな時に、私が手伝える事はないんだ。

とても寂しくなった。


自分のデスクに戻ってきた私を励ましてくれたのは、留美子さんだった。

「結野さん。今は不安だけど、とにかく社長達を信じましょう。」

「そうですね。」

そうだ。私が林人さんを信じないでどうするの。

私は私に、そう問いかけた。
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