ラグジュアリーシンデレラ
1か月後、何とか赤字を埋める目途はたったと、会社内で発表された。

傾きは何とか収まったようだ。

だけど、問題はそれで収まらなかった。


「また退社?」

「今週に入って、5人目よ。」

留美子さん情報だと、あの株の一件を聞いた人達が、新規参入の会社に移動しているらしい。

一度株が下がっただけで、こんなにも人が流出するなんて、思ってもみなかった。

「それが、この一件に関わっている人、りずさんかもよ。」

「りずさんが?」

私と留美子さんは、顔を近づけた。

「結局、朝倉宝石店は、ウチの会社と取引を止めなかったんだけど。ほら、りずさん。自分から婚約解消するって言った手前、また元に戻してって言えないのよ。」

「あらら。」

「だから逆に、新規参入の会社にも、太いパイプを持ちたいみたいよ。あそこの社長は、まだ独身だからね。」

「そういう意味ですか?」

あんなに、林人さんがいいとか、婚約が破断になったら、もう結婚できない!とか言ってたのに、すぐ他の人を見つけるだなんて。

ある意味、すごい人だよ。りずさんは。


そして、退社する人は止まらず、それでも尚、赤字は止まらなかった。

「こうなったら、大変申し訳ないのだが、希望退職を募ろうと思う。」

林人さんは、とても苦しそうな表情をしていた。

「今まで共に頑張って来た社員を手放すのは、非情に残念だが、会社を持ち直す為には、仕方ない。」

朝礼で林人さんは、皆に頭を下げていた。
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