ラグジュアリーシンデレラ
仕事のメアドに連絡したって、井出さんが迷惑するだけだ。

「なんか、もどかしいね。」

「いいえ、元々住んでる世界が違うので。気にしないで下さい。」

すると斉藤さんは、はぁーっとため息をついた。


「結野ちゃん。いい出会いを無駄にしちゃあ、ダメだよ。」

「いい出会いって……相手は社長ですよ?」

「逆にこれ以上ないくらいの、出会いじゃないか。」

斉藤さんは、強きだ。

「私はね。他の人だったら、何もこんなに応援しないよ。」

「斉藤さん……」

「若いのに、弟を大学に行かせる為にWワークしてるなんて。健気じゃないか。そういう子がね、幸せになってほしいんだよ。」


健気か。

私は逆に、井出さんとの住む世界の違いを、見せつけられたような気がした。

私は、気軽にお寿司なんて、食べに行けない。

しかも回らないお寿司を、お任せで握れるなんて。

お金に余裕がある人じゃないと、できない事だと思う。


「そうだ。朝、その社長に会ってるんだろう?連絡先、聞きなよ。」

「ええ?」

「何も女から聞いたって、可笑しくないよ?」

斉藤さんは盛り上がっているけれど、私はそこまで思えなかった。
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