ラグジュアリーシンデレラ
井出さん、どんな気持ちで、この電話番号を書いたんだろう。

すると斉藤さんは、私の両腕を掴んできた。

「早速、電話してみたら?」

「でも……」

「私もずけずけと聞いてしまったからあれだけど、社長さんだってきっと、結野ちゃんだから教えたんだよ?」

「はあ……」

でも、電話を架ける勇気なんてない。

まさか、いきなり電話だなんて。

「今の時代、女から電話を架けたって、おかしくないじゃない。架けるんだよ。いいね。」

斉藤さんはそう言うと、仕事に戻って行った。


「はぁー……」

この前のお礼はしたいから、連絡しなきゃいけないんだけど。

そうだ。Sメールだったら、文字も送れたよね。

私は後で返事を書こうと、ポケットに紙を入れた。

そして窓のサッシを拭こうと、会議室のドアを叩いた。

「はい。」

中から返事がした。
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