チップじゃなくてキスがほしい
まだ作品を書いている途中の先輩や同級生たちに声をかけ、虎徹とフランソワーズは廊下に出た。ひんやりとした空気に一瞬で包まれ、虎徹はブルリと体を震わせる。

「そういえば、今日は真冬並みの寒さになるんだっけ……」

体を震わせる虎徹に、「なら暖房があるところでしましょう」とフランソワーズが虎徹の手を掴む。華奢な手に包まれ、虎徹は寒さを忘れてしまった。

「えっ?あの、フランソワーズ……」

「どうしたの?何かあった?」

フランソワーズに見つめられ、虎徹は首を横に振る。手をつないだりハグをしたりするのは、フランソワーズにとっては当たり前のことだ。スキンシップに慣れていない自分が恥ずかしくなっていく。

二人は廊下を歩き、フランソワーズの教室に入った。フランソワーズがすぐに教室にある暖房のスイッチを入れる。

「しばらくしたら暖かくなるわ」

そうフランソワーズは言った後、かばんの仲良くから童話のお姫様が持っているようなピンクのアンティーク調のお菓子入れを取り出す。そこには色とりどりのキャンディが詰められていた。虎徹はお菓子入れの横にトランプを置く。これでいつでも秘密の時間が始められるのだ。
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