チップじゃなくてキスがほしい
「今日こそ勝てるといいな……」

虎徹がそう言うと、「私はそう簡単に倒せないわよ?」とフランソワーズは微笑む。そしてトランプをシャッフルし、五枚ずつ配った。

「じゃあ始めようか。ポーカー」

虎徹はそう言い、手元にあるカードと挑発的に微笑むフランソワーズを交互に見た。



虎徹がフランソワーズを初めて見たのは、高校二年生になったばかりの頃だった。美人な外国人転校生が来た、と話題になったことでフランソワーズを知ったのだ。

「モナコか……。確かカジノが有名だったっけ……」

チラリと旅番組で昔見たことを思い出しながら、虎徹はどんな女の子なんだろうとフランソワーズの教室に向かう。特別美人な女性が好きというわけではない。しかし、外国人転校生が珍しいと思い、気になったからだ。

「九重、お前も見に来たのかよ〜」

「お前って女の子に興味ないタイプだと思ってたわ」

虎徹と同じくフランソワーズを見に来たクラスメートにからかわれながら、虎徹はそっと教室を覗く。黒髪に黒目ばかりの教室で、その美しいブラウンの髪はとても目立っていた。
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