チップじゃなくてキスがほしい
初めて見かけたフランソワーズは、読書をしていた。その様子でさえドラマのワンシーンのように美しい。虎徹の鼓動が高鳴っていくのがわかった。

「モナコの共通語であるフランス語以外にも、英語と日本語がペラペラなんだと」

「外国語喋れるって海外旅行で苦労しないじゃん!羨ましい〜」

「めっちゃ美人!高嶺の花〜!」

周りの男子たちが騒いでいるというのに、虎徹の耳には何も入ってこなかった。それだけフランソワーズに見惚れているのだ。

しばらく虎徹が見つめていると、視線に気付いたのかフランソワーズがこちらを向く。虎徹は慌てて顔を逸らしていた。顔がまるで熱でも出たかのように熱い。

虎徹は、人生で初めて一目惚れというものを経験した。そして、フランソワーズが書道部に入部してきた時には拳をずっと握り締めているほど嬉しかったのだ。

最初は今のような関係ではなく、時々話す程度だった。しかしある日、虎徹がYouTubeを開いて音楽を聴いている時にフランソワーズが声をかけてきたのだ。
< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop