チップじゃなくてキスがほしい
虎徹はポーカーについて調べたことがあるといった程度だったので、ポーカーを実際にしてみてその難しさに驚いた。

ポーカーは強いカードをただ作っていけばいいという簡単なものではない。相手の持っているカードの強さを予想し、攻めていかなければならない。

虎徹は何度もフランソワーズと戦っているが、勝ったことは一度もない。これがもしも本当のカジノでのポーカーならば虎徹はもうとっくに一文無しだろう。

「コール!」

余裕の笑みを浮かべ、フランソワーズがキャンディを置く。コール、と言うその唇を虎徹は何度も見つめてしまう。ピンクの色付きのリップクリームが塗られたその唇は、触れるとどんな感触がするのだろう。そう思うと胸が高鳴って集中できなくなってしまう。

チップ代わりのキャンディは、いつも「私の勝ちね」と言ってフランソワーズが持って帰っていた。しかし、虎徹はチップなどどうでもいいのだ。ただ、フランソワーズとこの時間を楽しむだけでいい。できれば、キスをしてみたい。それだけだった。
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