密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
プロローグ
四年前、ニューヨーク。
クリスマスが目前に迫り、街のいたるところにイルミネーションやツリーが輝く、ロマンチックな夜。
その温かな景色とは真逆の、暗く冷えきった部屋で恋人と向き合っていた私は、何度話し合ってもお互いの心が重なり合わないことに疲れ、別れの気配を悟っていた。
『どうしても、残るつもりか』
『何度同じことを聞くの? 私の気持ちは変わらない』
『俺だってそうだ雛子。離れても、きみを愛している』
誰もわからない未来のことを、そんなふうに断言するのは無責任だ。なのに、愛していると告げられるとうれしくて、心が揺れる。
私だって愛していると、彼にすがって泣きたい。そう思ったけれど、できなかった。
いくら愛し合っていたって、ニューヨークと日本では距離が離れすぎている。それに、彼は平凡な自分とはまったく別世界の、選ばれた人間だ。
この恋を終わりにするのは、今が潮時。これが私たちの運命なのだと、自分に言い聞かせた。