密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
「今日は遅かったんですね、休憩」
私は伝票を手にして、席に着いた佐古田さんと稲垣さんに話しかけた。
店内の掛け時計は十二時半すぎを指している。いつもはだいたい十二時になってすぐに現れるから、今日は来ないのだと思っていた。
「いや~実は、今俺たちがリフォームに入ってる現場、小っちゃいオフィスなんだけどさ。そこで働いてる事務のねーちゃんたちが昼飯差し入れしてくれて、ついでに合コンにまで誘われちゃって」
わかりやすく鼻の下を伸ばした佐古田さんに続き、稲垣さんも上機嫌で話しだす。
「なんでも、僕たちのような仕事をするガテン系の男性がみなさん好みだそうで……これは、クリスマスイブの奇跡ですね」
「へぇ、やったじゃないですか! でも、お昼が済んでるならなんでうちの店に?」
そう尋ねると、佐古田さんはふふんと鼻を鳴らした。
「そりゃ、雛ちゃんに自慢するために決まってるだろ。ま、さすがになにも頼まないのは悪いから、仕事戻る前に飲み物だけもらうな。俺、クリームソーダ」
「僕はアイスコーヒーで」
「はーい、かしこまりました」