密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
夕方、煌人を保育園に迎えに行ってから店に戻ると、自転車を降りたところで店のドアから兄が出てきた。
「雛。今日はもう帰っていいぞ」
「えっ?」
「今日はもう混まないだろうし、煌人とクリスマスパーティーするんだろ? 早く帰って準備しないと」
「お兄ちゃん……」
なんとなく、そう言ってくれる気はしていた。九月の煌人の誕生日や去年のクリスマスも、兄は同じように私たちを早く帰してくれたから。
「ありがとう、そうさせてもらおうかな」
「うん。それがいい。煌人、今日はママとどんなご馳走食べるんだ?」
チャイルドシートに座ったままの煌人に、兄が尋ねた。
煌人は寒さと乾燥でりんごのように赤くなった頬をニコッと緩めて、うれしそうに答える。
「えっとね。ケーキと、こうやって持って食べる大きなチキン」
がぶっとかぶりつく仕草をしながら話すかわいい甥に兄の目尻も下がり「そっか、楽しみだな」と、ヘルメットをかぶった煌人の頭をぽんぽん叩いた。