密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「じゃ、お先に、お兄ちゃん」
「誠おじさん、ばいばい」
「ああ、楽しいクリスマスをな」

 店の前で手を振る兄に別れを告げ、私はまた自転車をこぎ出す。

 年末が近づいてくるにつれますます寒くなってきたが、息子と過ごすクリスマスを思うと、胸はポカポカ温かくなる。

「そういえば、煌人」
「なーに?」
「今日はさ、サンタさんに会えるんだよ」
「えっ! ホント!? 保育園に来たニセモノじゃない?」

 保育園に来たサンタを〝偽物〟と断言する息子に、苦笑が漏れた。

 先生方だって、忙しい保育の合間を縫って衣装やプレゼントを用意してくれただろうに、三歳児に偽物だと見抜かれているのを知ったら、悲しいだろうな。……連絡帳には書かないでおこう。

「今日会えるサンタさんは本物」
「何時に来るの? 僕、それまでにお風呂入るから!」

 時間……玲士とは相談済みだけど、そのまま伝えても大丈夫かな。大丈夫だよね。

「えっとね……八時ごろって言ってたかな」
「そっかぁ。どうしよう、ドキドキする」

 私がサンタと連絡を取り、訪問時間について会話を交わしたという夢のない部分に突っ込まれなかったのでホッとした。

「よしっ。じゃ、サンタさん来る前にお風呂に入って、チキン食べながら待ってよう!」
「うん!」

 私はペダルをこぐ足を速め、途中でケーキ屋に寄って予約していたケーキを受け取ると、冷たい風を切ってアパートに向かった。

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