密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「笑うなよ。真剣なんだから」
「ごめん。あまりにいつものイメージと違うから。でも似合ってる。煌人もすごく喜んでたし、ありがとね。わざわざ来てくれて」
「礼を言うのはこっちだ。煌人に会うことを許してくれて、感謝してる」
「玲士……」

 しばらく沈黙が流れ、私たちは見つめ合う。

 このままロマンティックな雰囲気になりそうな気配はあったが、玲士の格好は相変わらずサンタクロース。やがて我慢できずにふっと笑った私のせいで、甘い空気は薄れた。

「ふふ、ごめんね。その格好、本当に玲士らしくないからおかしくて」

 なかなか笑いが止まらず小刻みに肩を揺らす私に、玲士はため息をこぼす。

「子どもには受けるが、女性を口説くのには向かない衣装だな。……仕方ない。変身を解くとするか」

 玲士は言いながら、赤い帽子と、耳に掛けていた付け髭の紐をはずした。帽子で乱れた髪を軽くかき上げて直すと、私を見下ろして聞く。

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