密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~

「これならおかしくないか?」
「うん。でも、せっかくだから帰るまで着けててよ。私もまだサンタの玲士見てたいし」
「ただ俺を笑いたいだけだろう」
「あ、ばれた?」

 クスクス笑う私に玲士は心外そうな顔をして、突然ずいっと顔を近づけてきた。鼻先が触れそうな距離にギュッと心臓が縮む感覚がして、私の顔から笑みが消える。

「ご、ごめん。怒った?」
「別に怒ってない」
「じゃ、じゃあ離れよ……? ね?」

 そう言い聞かせている間にも、玲士はじりじり距離を詰めてくる。間近で視線が絡み、鼓動がドキドキと暴れた。

「玲士?」
「言っただろ。……アプローチはするつもりだと」

 甘い低音で囁くなり、玲士は長い睫毛を伏せて顔を傾け、私の唇を自分のそれで塞いだ。

 突然のキスに一瞬頭が真っ白になり、私は身動きも取れないまま瞬きを繰り返す。

 けれど玲士の香りに包まれていると、かつて何度も交わしたキスの記憶がよみがえり、徐々にその甘い感触が心地よいものになっていった。

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