密かに出産したら、俺様社長がとろ甘パパになりました~ママも子どもも離さない~
懐かしい、玲士の香り。唇から伝わる、彼の体温。大好きだったあの頃と、なにも変わってない。私の胸を熱くさせるキス――。
目を閉じて感傷に浸っていると、長い間重なっていた唇がゆっくり離れていき、それでもまだ蕩けそうな目をした玲士が、私の頬を両手で包み込んで告げる。
「もう一度してもいいか?」
「……拒否権はないんでしょ?」
「物分かりがいいな。どうせ、今さらダメと言われても止まれない。なにせ、四年ぶりの雛子の唇だからな」
そう言って悩まし気な吐息をこぼした玲士が、再び私の唇を奪った。『もう一度』と言ったくせに、何度も何度も角度を変え、啄むようなキスをする。
私は彼の背に腕を回そうかどうしようか迷って、やがて観念したようにギュッと広い背中に掴まった。その瞬間うっすらと目を開けふわりと微笑んだ玲士に、胸がトクンと鳴る。
「……ずるいよ、玲士」
キスの合間に、私はそう言って彼を睨んだ。